レッスン
混色について 2006/6
今まで教室では、「混色すれば色は作れます」と伝えてきましたが、何故そのように言うのか、混色はどのようにするのかを整理し伝えてはこなかったということに気が付きました。そこで、混色をすすめる理由と、方法を以下に述べておきます。
混色を勧める理由
そもそもすべての色というのは、3原色(赤、青、黄色)と白から出来ていて、この3色と白が混ざる割合で色は変化していきます。
トールペイント用絵の具には沢山の色が販売されています。たとえば赤といっても何十という種類に分かれています。そこでペインター達は色をほとんどよく見ることなく、この場所には何番の絵の具というように沢山の絵の具をそろえて色を塗り重ねていきます。ところが次の課題になるとその絵の具はほとんど使えず、又別の番号の絵の具をそろえるため、作品が増えるたびに新たな絵の具が増える仕組みになってきます。まして新色が発売されると、最新のパケットや本も新色で描くように指定されてしまい、その結果
「エ〜、この番号の絵の具はどんな色?持ってないから描けない〜」
ということになってきます。これでは絵の具会社の思う壺です。又お店には沢山の色の絵の具が並び、楽しくなってつい買い込み、気が付くと同じような色ばかり何本もそろってしまう事もありますね。でも、実際はその色すべてを使って絵を描いた事は少ないのではないでしょうか。
私達は小学生の頃12色の絵の具で絵を描きましたね。その時絵の具の色数が足りなくて困った事がありましたか?別の絵を描くために新しい色を買い足しましたか?ない色は混ぜて描いたのではなかったでしょうか。12色の絵の具を使っても、最初描いた絵が次の作品と同じ色合いになることはなかったでしょう。
絵の具を使って絵を描くという事は、描きたいものの色をしっかり見て写しとると言う事だと思います。物体には明るいところや暗いところ、鮮やかなところ渋いところなどがあり、それは皆色の違いによって表現されます。この色の違いをわかっていく事抜きに、絵を描く事はできないでしょう。だから、番号で絵の具をそろえ何度塗り重ねて作品を作っても、色をきちんと見る力を養わない限り絵を描く力量が蓄積されてこないのです。絵の具の色をいくら沢山持っていても使いこなす力がつかないので、絵が描けるようにはならないのです。 (あの絵の具の量を使いこなせる人は本当にいるのでしょうか。)混色で色を作ると、その色に近づけようと否が応でも対象の色を見ることになります。迷いながらこのあたり、と決めた色、よく見ながら色を作る力こそ絵を描いていく上での欠くことのできない力なのではないかと思っています。又最初は面倒なようですが、混色しながら思わぬ発見をしたりし、絵を仕上げる過程そのものも楽しくなってきます。・
・・ということでまとめると、
混色は、
絵を描く力をつけ、楽しく描けるようになる。
無駄な絵の具を増やさなくて済む
です。
混色の方法
基本的には3原色(赤、青、黄色)と白、藍があれば描く事が出来ます。(金や銀は別)
が、私達は沢山の絵の具をすでに持っていますので、これを使わないのももったいないですね。そこで、今もっている絵の具に3原色、白、藍を混ぜて似た色を作る方法を提案します。(これはあくまで例ですので、各自がこれ以上の新たな発見をしてみてください)
まず混色の仕方ですが、描きたい色と似たような色の絵の具があればそれを用意します。そして
その絵の具の色をもっと鮮やかにしたい 赤くしたい・・・・赤を少しずつ混ぜる。
〃 青くしたい・・・・青〃
〃 黄色くしたい・・黄色〃
その絵の具の色の鮮やかさを落としたい・・・その絵の具に含まれてなさそうな3原色のうち、1色を混ぜる(たとえば、オレンジ色には黄色や赤が含まれているが青は入ってなさそう→青を混ぜる)
すこし鈍くしたい・・・・・白と赤、黄、青を混ぜる
もっと鈍くしたい ・・・・白と赤、黄、藍色を混ぜる
明るくしたい・・・・・・・・白を混ぜる
暗くしたい・・・・・・・・・・赤、黄、青を混ぜる
もっと暗くしたい・・・・・赤、黄、藍色を混ぜる
透明度のある黒を作りたい・・・・赤、黄、藍色を混ぜる
(絵具の黒は不透明です。混色して塗重ねをしていくと絵が汚れたようになってきやすいです。そこで、赤、黄、藍色でソフトブラックを作ると透明度のある黒が出来ます。これを使うと良いと思います。私は多めに作ってフィルムケースに保存しておきます。)
混ぜるときは紙パレット(牛乳パックでも可)を使い、竹串などで元の絵の具に少しずつ様子をうかがいながら混ぜていく事、その後水パレットなどに移す。
下塗り用絵の具は必ず少量保存しておく事。後で修正をする時用です。(空いたフィルムケースを写真屋さんでもらってくると良いです。)
今後絵を描く時は必ず混色をしなくてはいけない、新たな色を買ってはいけないという事ではありません。が、少なくとも教室での作品作りでは以上のような方法でも描いてみましょう。本などを見て自分で描くとき色がわからないことがあります。そのときは色見本や対照表で調べる事を勧めます。または教室にある絵の具で確認してください。(沢山の絵の具を買い揃えてしまった私自身の失敗の結果があります。)
以下は、私がアクリル絵の具の中で選んだ3原色と白、藍色です。
参考にしてください。
白・・・セラムでもアメリカーナでも良い ホワイト
赤・・・アメリカーナ チェリーレッド DA159
青・・・アメリカーナ ウルトラディープブルー DA100
黄・・・アメリカーナ ブライトイエロー DA227
藍色・・セラムコート マンガニーズブルー CE2124
透明で綺麗な赤紫(マゼンタ)を作る場合・・・・セラムコート ベリーレッド (このことを教えてくださったのは、ペインターのカントリーおばさんです。)
おまけ
絵具には透明度の高いものとそうでないものがあります。セラムコートの中で、アボガド、テラコッタは透明度が高いようです。私はこの絵具を混色に使ったり、絵の仕上げに薄く皮膜をかけるように塗るグレースに使用する事もあります。